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メソッド屋のブログ

米マイクロソフト DevOps エバンジェリスト 牛尾の日記です。ソフトウェア開発の上手なやり方を追求するのがライフワーク。本ブログは、個人の意見であり、所属会社とは関係がありません。

日本でインターナショナルチーム文化を作る方法を考えてみる

 今まで、幾つかのポストで書いてきたのですが、私は今のインターナショナルチームのポジションをとても気に入っています。楽しく、気に入ってるだけではなく、実際の生産性やワークライフバランスも過去最高です。

f:id:simplearchitect:20160424220436j:plain    私は、「Be lazy」の回で書いた通り、「Be Lazy」を極めるために、「エッセンシャル思考」を実践しています。日本Microsoftは相当素晴らしい会社ですが、それでも、正直いうと、日本で「エッセンシャル思考」を実践すると、若干肩身が狭い思いをします。かといってこの人体実験をやめるつもりはありません。私の職業上の次のゴールは、「世界のどこでもご飯を食べられる様になること」だからです。

simplearchitect.hatenablog.com

 一方、「Be Lazy」の考えを、チーム丸ごと受け入れてくれて実践しているお客様がいます。そうか、チーム丸ごとその考えを受け入れるならば、問題なくなるのかもしれない!

 そう考えて、日本で、インターナショナル文化を実践する方法を考えてみました。なぜこのインターナショナルチーム文化が、快適なのか、どうしたらインストールできるのか?

 私が考えた結果、今の所の仮説ですが、Microsoftの考えを受けて、私のチームのマネージャである「Damien」がこの素晴らしい文化を作ったのではないかと思っています。つまり、日本とかインターナショナルとか関係なく、「Damien」がやってくれたことを再現すれば同じ文化ができないだろうか?という思考実験です。

 試したことはないので、効能はお約束できませんが、彼が私たちにやってくれたことを整理してみたいと思います。あなたがマネージャならこのようなチームを作ることができるかもしれません。

上下感覚がないチーム作り

 実はDamienは私より年下です。しかし、そんなことは誰も気にしません。私のチームメートは大抵私よりずっと下だと思います。しかし、それも誰も気にしません。上も、下も気にしないのです。年齢だけではなくスキル、経験、それで、上だとか、下だとか誰も考えていないと思います。Damienの上司にあたる、Volkerも同じです。私が話すときも、偉い人と話しているという感じではなく全くの対等です。

 きっと、サティアと喋ることになっても緊張もせず、「Hi」って言っちゃうと思います。しかし、日本にいると、偉い人に喋りかけてもいいんだろうか?とか考えている自分に気づきました。

 どんな人でも、新人であっても、ベテランでも、社長でも、同じ仕事をする仲間です。やってることが違うだけで上とか下とかなく、上の人が下の人をコントロールするという感覚自体がありません。仕事は、Bossであっても、私たちに仕事を依頼するときは「お願い」モードです。例えそれが決まっている「月次週報」であっても。偉そうな人は見たことがありません。他の人に「教えてやる」とかそういうものもありません。全ての仕事がプル型です。誰か困った人がいたら主体的に助けを求めて、他の人が助ける。それだけです。

 ボスの言うことが絶対というイメージもありません。ディスカッションもみんなで意見を遠慮なく言い合いますが一度もバトル的になったことはありません。ボスに決定権はありますが、それを振りかざす人はいません。

サーバントリーダーシップ

 ボスが仕事を割り振って、「このよのような仕事をやり方をしなさい」と細かく指示していくやり方をマイクロマネージメントと言います。最近ではサーバントリーダーシップという、ボスが細かく指示をしていくというよりも、メンバーが与えられたミッションに対して、やり方を考える。それをボスがサポートしていくというリーダーシップの形態になっていると思われます。

books.rakuten.co.jp

 Damienも本当にその通りです。チームとしてのゴールやミッションの共有はしっかりしてくれます。それは数値で書かれていて無理がなく、明確です。

 そして私のゴール設定もかなり親身にやってくれます。私がそのゴールを達成するためにいろいろ困って彼に相談したらいろいろアドバイスをくれます。が、彼が私に「あれしろ、これしろ」と細かく指示することはありません。私の仕事の遂行を助けてくれるサポーターという面持ちです。また、彼は私に何かのデッドラインが近づくと、リマインドをしてくれたりします。彼は、誰かを見習えとかそんなしょーもないことも言いません。だから、全てのメンバーがそれぞれの個性を発揮して、それぞれイキイキいい仕事をしています。

 またその上のVolkerも同じなのですが、自分が判断に困ったら、素直にチームに聞いてきます。チームでそこに知見がある人や意見を持っている人が彼らにアドバイスします。

 だからと言ってチームメンバーは誰れも彼らのことを「頼りない」とは思っていない様子で、「素晴らしいマネジメントだ」と思っています。少なくとも私はそうだし、チームメンバーも彼らの悪口を言っているのを聞いたことがありません。

One on One ミーティング

 Damien、そして、私の日本側のサポーターである Drew は One one One ミーティングを毎週30分やってくれます。私に共有したいことや、やってみたいことの相談、悩み事がなければすっと終わりますが、あれば、いろいろアドバイスをしてくれたり、助けてくれたりします。また、私が日本での、DevOps エバンジェリストに就任したときに、DevOps ハッカソンを実施しに、Davidと一緒に来てくれて、直接日本に来て過ごしてくれました。彼は他の国にも同じように行っているようです。そして、彼はみんなに「指示」をしたり、「いうことを聞かせよう」とする代わりに、メンバーを「理解」して「助けよう」としてくれるのです。

「Be Lazy」を推奨する空気作り

 Damien そして、Drew、Volker、もちろん他のチームメートも同じですが、「Be Lazy」つまり、より少ない工数で、多くのバリューを出す考え方、たくさんの物量をするのではなく、「減らして、インパクトのあるものに集中する」考え方を良しとしています。だから、逆に残業とか休出とかをしていると、渋い顔をして「休暇をとろう。」と心の底から言ってくれます。楽にいい成果を達成することを発見したらみんなが喜んでくれます!「うまくやったな!今日はもうPubにでもにいこうぜ!」って。だれも「定時まではいないといけない」とか言い出しません。

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休暇を尊重する

 休暇を尊重される空気も素晴らしいです。日本だと、仕事が終わっていないと休暇中でも「終わってないのだから仕事しなあかんやろ」とプレッシャーが来ることは珍しくありません。休暇をとりたかったら、それまでに終わらせておくことが求められます。  インターナショナルチームでは、休暇をとるということは本当に尊重されます。仕事が途中だから、と誰れも責められることはありません。

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 この前の話をしておきます。私はある記事を書きました。英語だったので、ネイティブのメンバーにレビューをお願いしました。レビューをしてくれる人が、私にコメントを求めてきたのですが、その翌日休暇で、他の仕事でいっぱいだったこともあり、コメントを返しませんでした。

休暇が開けた当日、その人のボスが私に「コメントを今日中にお願いします。」と珍しく催促してきました。流石にせっかくフォローしてあげているのに、全然レスポンスがこないし、ムッとしたのかもしれません。

 私は「大変レスポンスが遅くなって申し訳ない。ここ直近休暇だったのです。今日やります。」と返しました。すると、「ありがとう。おお、そうやったんか。君が素敵な休日を楽しんだことを願ってるよ!」と帰ってきました。休暇の間に途中だからと言って、何かが求められることはまずありません。

(余程の大事件でもない限り、、、今まであったことはありませんが)

 自分もそうですが、相手が休暇だったら、「あー休暇だったら仕方ないよね」と諦めます。社外の人であってもそのノリです。自分だってせっかく休暇しているのに、メールがバンバンやってきて対応に追われたら何しに来ているのか分からなくなります。休暇は貴重なものという認識のようです。

 でも、チームでそういうことが推奨されていなかったらこのムードは作りにくいと思うので、チーム単位で作っていくといいかもしれませんね。

ダイバーシティの学習

 前回の記事でもダイバーシティを取り上げましたが、Damien は23カ国のメンバーをマネジメントしたことがあり、尚且つ、彼は25カ国以上の文化や、商習慣を学んでいるらしいです。彼はそういうダイバーシティや相違を理解するべく努力をし、さらに、先に書いた通り実際に会いに行ったり一緒に仕事をして、チームを作っています。

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テクニカルエクセレンス

 日本でマネージャというと、あまり技術ができない感じですが、彼は例えばChefのレシピは余裕でかけますし、ハックフェストも余裕でサポートします。彼に聞いてみました。「君は私よりずっと忙しいとおもうんやけど、どうやって技術をキープしているの?」彼は言いました。

「毎週金曜のPMは時間をブロックしてハックしているんだよ。」同じようにその上のVolkerも、DevOpsの技術やプロセスの話をしても通じなかったとか、話がわからないとかはありません。日本ではたまに「お前がしたかったら、俺に理解させてみろ」とか昔言われたこともありますが、そういうことはありません。DockerConに行ったときも、メールで懇親会の場所が送られてきたのですが彼がGitHubにアップロードした、Dockerfile を使って、Docker コンテナをデプロイしたら、懇親会の場所がわかるという仕掛けを作っていました。 :)

ただ、自分の知らないことに関しては素直に「知らないので教えてくれないか?」と言います。

f:id:simplearchitect:20160424221226j:plain ハッカソンを支援するDamien

「楽しんでいるか?」を確認する

 Damienが私と One on One をするときに必ず聞いてくることは、「Tsuyoshi よ、仕事をエンジョイしているか?」彼は毎回そう聞いてきます。私の答えが No だったら、エンジョイできるようにいろいろ助けてくれます。

 だから、うちのチームは、「仕事つまんねー」とか「なっとくいかねー」と言っているメンバーを見たことがありません。最初は気にしていませんでしたが、チームメンバーが「エンジョイしているか?」を確認するのはすごく生産性に貢献しているのかもしれません。

 そして、そうすることで、仕事が「エンジョイしてなんぼ」なものとしてのムードを作ってくれているのかもしれません。  日本では仕事は「我慢してなんぼ」みたいなムードがありますが、誰だって、楽しく、エンジョイ出来ている方が、よりパワーを発揮できるのではないでしょうか?多分「我慢してなんぼ」の流れは、ボスが、他のメンバーを「指示してコントロール」していた頃の名残で、メンバーがゴールを与えられてそれをメンバーが個性を発揮して実施し、ボスがその達成を助けるというマネジメントスタイルでは、他の人に「いうことを聞かせる必要がない」ので、必要ないし、そもそも、エンジョイ出来ている方が少なくとも私は楽しいし、生産的な感じがしています。

おわりに

Damien は、私にとって今まで遭遇した中で最高のマネージャです。彼は自分の夢を語っていました。「私はいつかこのチームが世界で もっとも素晴らしいワークプレースだと言われるようにしたいんだ」私はこう答えました。

「少なくとも私にとっていまでもそうやで。Damien君はいままで出会った中で最高のマネージャだよ」

これは私が心のそこから思っている言葉です。私の視点でしかない記事ですが、少しでもなんらかのお役に立てれば嬉しく思います。