メソッド屋のブログ

米マイクロソフト Software Development Engineer 牛尾の日記です。ソフトウェア開発の上手なやり方を追求するのがライフワーク。本ブログは、個人の意見であり、所属会社とは関係がありません。

「何をやっても駄目だった」ポンコツの自分を救ってくれたマインドセット

 先日 エンジニアType さんから取材『牛尾剛さん、『世界一流エンジニアの思考法』って本当に日本でも実行できますか?(仮)』を受けました。私は「日本で出来ないことは何一つありません」と回答しました。私が日本にいるときに実際に実施したアクションや、実際にやってみた事例などをご紹介しました。

 それは、私が自信に満ち溢れた人物だからではなく、幼少のころから自己肯定感も低く、何をやっても上手くいかなかった自分を救ってくれたちいさな「マインドセット」があったおかげです。

「何をやっても駄目だった」ポンコツの自分を 救ってくれたマインドセット

 このマインドセットは『日本では一見難しそうな何かを実現すること』に対しても過去の人生でとても有効でした。同じような悩みを持つ人のために、エンジニアTypeさんの記事のフォローアップとしてこちらにも書いてみることにしました。それは小さなマインドセットのチェンジなので、少しだけ練習するだけであなたにも手がとどくような小さな「考え方」の転換です。

現状は過去の自分の選択の結果

 そのマインドセットは単純で、「他の誰かや、世間の仕組みによって『何かが出来ない』ということは一切世の中に存在せず、自分の選択の結果しかない」と考えることです。物理的な法則で不可能なものは世の中に本当に少ないはずです。ただ、多くの人が『自分以外の何か』によってやりたいことが出来ない悩みを持っているようです。その状態は面白くないでしょう。だって他の人に自分の人生握られるなんてなんも面白くないし、それによって自分のやりたいことが出来ないとかつまらなさすぎます。

 ただ、『現在の状況は、自分が、自分の意志で選択した結果そうなっている』ということを理解すれば事態はいろいろ簡単でシンプルになってきます。自分の選択で現在の状態になっているのであれば、今日から違う選択をし始めたら、もちろん自分にとって面白い未来が待っているということですから!

 このマインドセットについて解説してみたいと思います。

部長が絶対に許してくれない

頑固系部長

 例えば、本に載っているような新しい開発のやり方をやってみたいとします。でも部長が絶対ゆるしてくれないから無理だ。という状況があるとしましょう。この状況は実際は出来ないのではなく、自分が「やらない」もしくは「やりたくない」という意思決定をしています。どういうことかと言いますと、実際にはこの状況を突破するためには無限の方法があります。自分が「やりたい」と思うのであれば。 例えば

  • 部長を説得するために、心理学を学習して実践して、部長を説得する
  • 部長がそれをいやなら、他の部署のわかりがいい人のところに異動させてもらえるように働きかける
  • 部長を政治的圧力で更迭して、他のわかりのいい部長に来てもらう
  • 部長がダメならその上の事業部長に相談してみる。それでもだめならその上に行く
  • そういうのがめんどくさいなら、会社を辞めて、やりやすいところに転職する…

など無限に見つかります。ただ、こういうのにエネルギーを使うのが面倒だったり、そこまでパッションなかったりするので、「やらない」という選択をしたにすぎません。もしくは「難しいから無理」とやる前から思い込んでいるというケースもあるでしょう。

 例えばこの例だと、実際は勇気をだして部長に話してみると「新しいことをやるのはいいことだね。今のプロジェクトは今からは変えられないけど小さな安全なプロジェクトで試してみようか」というケースも実際によくありました。やってみなければ「難しい」かすらわからないことに気づきました。ちなみに私は「努力」すらお勧めしているわけではありません。例えば、「努力はめんどくさいから、努力せずに自分の思ってることを達成したい」と考えて工夫するのも最高だと思います。自分に行動力がないと思うなら、行動力のある人を味方につけてやってもらうでもいいかもしれません。ポイントは「行動する」こと、そして「行動」しないと次のフィードバックは得られないということです。大抵の人はやる前から尻込みしているのにすぎません。やってみると簡単かもしれませんよ。

 「やりたくない」とか「やらない」選択は何も恥ずかしいことではありません。自分の人生に対して自分に対して命令できる人は世の中に存在しません。私も時間は有限なので「やらない」「やりたくない」みたいな選択をすることももちろんあります。だから、第三者や自分以外の何者かのせいで何かが出来ないという状況は存在しません。よかれ悪かれ、「自分で選択」した結果が現状になっているのです。どう思っていても、すべて「自分で選択している」とわかったら気が楽じゃないですか?

人生をコントロールする

 ストレスは自分が「コントロールできない」状況から生まれるのではないでしょうか。例えば、上記の例で、自分がそこまでそれをやるエナジーが無いので「やらない」という選択を自分でしたとしても、「自分が選択した」のだから、ストレスがありません。気が変わっていやになったら辞めてもいいです。社内の中で頑張りたかったらそれでもいいです。一度やらないと決めたけど、やっぱりやろうかなと思ってもいいです。

 つまり選択は常に自分であり、他の誰かにコントロールされることは存在しないという考え方です。私は同時に他に人に「〇〇すべき」とかいうのはおこがましいと考えています。この考え自体も私の考えをシェアしているに過ぎません。ただ、観察してみると私と同じようにこんな感じで考えている人は総じてストレスがなく、本人が楽しそうです。

出来ないケース

 じゃあ、出来ないケースはないのか?と考えられるかもしれません。物理的に不可能な何かだと無理かもしれませんが、本に書いてる内容でそんなものは存在しません。このマインドセットだと出来ないのではなく、「やらない」と自分が選択しただけという考え方になります。もしくはやる前から「無理と思い込んでいる」でしょうか。それも結局自分で「やらない」を選択しています。「やらない」とか「やりたくない」のケースはなぜやる必要があるでしょう?それは恥ずかしくもなんともありません。人生の時間は有限です。そして「やらない選択をした人」や「やりたくない選択」をした人に無理からやらせるなんておこがましいと思います。ただ、自分が「やりたい」と思って行動するなら出来ないことは何もないと断言できます。

才能ないし、親も貧乏なんやけど

 私はこの前ある人に「マイクロソフトに入社するのはすごく難しいですよね」と言われてびっくりしました。なぜびっくりしたかというと、私はなんも苦労してません。私の同僚でマイクロソフトが好きだから時間をかけていろいろ工夫して入った人もいます。よく考えると、その発言をした人はやったことも、入社するために戦略を立てたり、工夫したこともないのになぜ「難しい」とわかるのでしょう?本当に世の中はそんな「難しいこと」だらけでしょうか?答えは多分小さな勇気と行動です。多分マイクロソフトのに入った他の人もたぶんこう答えると思います。「難しくはないよ。ただ自分で行動したからここにいる」。

Microsoft

 なんとなくの私の妄想かもしれませんが、そういうケースは、マイクロソフトに入るような人は、才能にあふれていたり、親の経済状況が良かった人なのだろうと思っている節はないでしょうか?確かに才能の違いも親の経済状況の違いもあります。くっそポンコツの私の例でお話しますと、私は才能ないですから、普通の人の3倍かかります。才能ある人が3倍速くできるとします。じゃあ、私が9年今のまま頑張れば、「才能ある」人の1年目の状態に到達するかもしれません。みんなが「こいつできる!」と一目置くような状態に。

そこそこ貧乏でした

 私の家の経済状況を公開しますと、貧乏でした。極貧ではないかもしれませんが、父親は良かった時に儲かったお金をすべて使い果たして、借金を残して自殺しました。家族は貧乏な公団の団地暮らしだったけど、母はそんな状況でも必死に働いて自分たちを育ててくれました。大学にまで行かせてもらえましたがもちろん奨学金です。そんな親になんの文句が言えるでしょうか?感謝しかありません。人の経済状況のスタート時点はそれぞれやけど。そこからは自分の人生のターンです。自分でコントールできないそこを嘆いても残念ながら何も Happen しません。

 私はマイクロソフトの Azure Functions のチームにいます。物凄ーーーーく頭いい人、明らかにスーパー才能ある人もいます。でも、自分の一番のヒーローであるクリスに対して「才能ある」とか「頭いい」とか思ったことはありません。当たり前ですが全員がそうではありません。一方私がスーパー頭いいと思ってる Paul とか、めっちゃくちゃ才能ある Glenna は楽して今のポジションにいるかというと、彼らは明確に頑張っています。行動して、頑張ったから今のポジションにいます。彼らに才能あっていいなとかいうときっとこういうでしょう。「いや、わしがんばったんやで。失礼な」と。

才能ある人とは?

 才能とか親の経済状況とかは、0.0000000000001 ぐらいしか作用しないと考えましょう。自分がどういう状況であろうとも、そういうマインドセットで考えるといろいろ良いことに気づきました。正直誤差です。オリンピックで金メダルとか Top of top の世界なら影響あるかもしれませんが、そうでなければ、人がうらやむような環境を手に入れるために必要なことは小さな「行動」です。人がうらやむような環境にいる人を何人も見てきましたが、誰一人として本人が行動せずその位置にいる人はいません。才能ある人も、ない人も、親が裕福な人も貧乏な人も誤差の範囲内であり、いくら才能と親が裕福な人でも、本人が「行動」しなければ、何も Happen しないので、才能も無いし親貧乏やけど、行動する人と比較すると、比較もできないぐらい惨敗します。繰り返しますが、自分の選択以外の要素で何かが起こることはありません

 そんなことを言っても実際はちゃうやろと思う人もいるかもしれません。そういう人に見てもらいたいマイクロソフトの吉田さんのポストがここにあります。ぜひスレッドを見てみてください。紹介されている10人は本当にみんなが考えるエリートなんでしょうか?

 彼はアメリカの就職にはコンピュータサイエンスの学位が必要だというポストに対して次のように反対意見を述べました。ちなみに、吉田さんは、就職できずマクドナルドでバイトしていた状態からマイクロソフトに入って大学に平行して通って、毎年のように出世して若くしてすでにプリンシパルです。でも「才能」ではなくて彼の場合純粋に「努力」だと思います。単純に自分より彼がやっているから、彼が自分より認められるのは当然です。このように考えると、ストレスも嫉妬もなにもありません。「やる」も「やらない」も自分が決めた結果だし、いまから変えたければ、何らかのものを「やる」に変えるだけですからシンプルです。

本当にできるのかよ?

 じゃあ、お前できるのか?と言われそうですが、私の具体的な事例ややり方をエンジニア Type さんに、日本でどうやって導入して、実践して、そして成功したのかをすべてお話しておきましたので、リンクを参照していただければよいと思います。

ただ、これは私の事例であり、皆さんの状況はどれも違うでしょう。しかし、今回お話している「マインドセット」が自分が紹介したすべてを可能にしてくれました。

 何もできなかった自分であっても、多くの人が実施しない小さな「行動」をすることで。自分の場合は、自分がダメすぎて、前に進むしかなかったのですが。だから、「やりたい」ともし選択したならば、「どうやったらできるだろう」と考えて、やってみて、うまくいかなかったら「なぜうまくいかなかったんだろう。次はこうしてみようかな」という感じでうまくいくまでチャレンジすればよいです。上記で紹介した方法はこのようなマインドセットで行動した結果の一例ですので、様々な状況にきっとフィットするのはマインドセットの方が汎用性があります。

自分が望んだ姿へのステップ

難しく考えなくてもこのプロセスでほとんどのケースは問題解決します。もちろん途中でエナジーがなくなったら「やっぱめんどくさいからやらんとこ」と思ってもなんも問題ありません。だって、自分の幸せが何より重要ですから!そのケースでも自分で「やらない」と選択したわけですから。自分の心がつらくなりません。

自分の人生を好転させる方法

取材でもお話しましたが、上司に紹介してもらった本で、私もお気に入りの Atomic Habit を紹介したいと思います。日々のほんの小さな「習慣」を積み重ねることで本当にすごいことが達成できます。こういう努力とも思えないような「小さな習慣」を積み重ねることで本当に人は遠くに行けます。もし努力したくないなら、努力せずにどうしたらできるかを考えると良いでしょう。

Amazon.co.jp: ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 eBook : ジェームズ・クリアー, 牛原眞弓: 本

まとめ

人生において第三者によって、「出来ない」ことは物理法則以外存在しません。「やる」「やらない」というジャッジを自分が選択しているだけです。だから、自分がやりたいことがあるならば、自分がやりたいことにフォーカスして「やる」判断をして、自分にとって重要でないことは「やらない」ジャッジをして負荷を減らします。ただそれだけです。自分以外の第三者や環境によって左右されるものなど存在しません。  自分次第です。自分の人生は自分で責任をもってコントロールしてエンジョイしましょう! 本当にたったこれだけのマインドセットのチェンジで、ほとんどの「日本では出来ない」問題は解決します。そうして、小さな習慣を積み重ねれば、自分がなりたい状況に徐々に近づいていきます。特に他の人がこういうマインドセットでないなら、大チャンスです!皆さんがもっと人生をエンジョイできますように。

他の具体的なTips はぜひエンジニア Type さんの記事をお楽しみください!

最近ありがたくも沢山読んでいただけているのですが、世界一流エンジニアの思考法という本をだしましたので、もしよかったら読んでくださいね!