プログラマの第三の選択 - SonicGardenのビジネスモデルについて考える
ソニックガーデンは、利益や、成長よりも顧客、エンジニア、経営者の幸せを求める革新的な形態の新しい企業だ。今後このような形態の企業が増えてくると思われるが、その先便の企業だと思う。
日本のソフトウェア業界の企業形態
日本のソフトウェア業界にある企業を3つに分類してみた。そして、その傾向を分析してみた。
A. モーレツな成長と成功を求める会社
これは2種類あり、スタートアップ系のベンチャーと、Amazon, Google, Facebook等既に成功し、成長したスタートアップ系企業だ。スタートアップの場合は、ほぼバクチのようなもので、当たり外れが激しい。最初の給料は激安。その代わり成功したときに入る収入は段違いだ。その代わり、生活はほぼ犠牲にされると思っていい。経営者もこれは同じで成功した暁には凄く大きなお金と、働かなくてもよくなるぐらいの自由が手に入る可能性がある。ただ、成功の確率はとても低い事も確かだ。
プログラマとしては凄くエキサイティングな仕事ができる。ストックオプションをもらっていたら大金が手に入るかもしれない。世界を変える事、大金とゲットし、自由にもなれるかもしれない。ただし、ストックオプションをもらっていればではある。そして、AmazonやGoogle等の企業に勤めると、凄く忙しいが、お金は沢山もらえるだろう。エンジニアとして仕事も高度で最高に楽しいだろう。ただし、優秀でないとそういった企業には入れないし、スタートアップのメンバとしても一定以上優秀でないと、すぐに事業が失敗してしまうだろう。お客様にとっても、優れたサービスを、コストパフォーマンスよく提供するので、ファンになることも多い。経営者とプログラマは、ストックオプションがあれば運命共同体だ。
C. 利益を求めて経営者が社員を雇用契約して使う形態の企業
これは一般的なSI系の企業だ。利益を求める形態で、中間のマネージャもいるため、お客様としてはWin-Winになりにくい傾向にある。お客様がこの企業のファンになるケースは、「安心」を求めるとき、それから担当している「SE」や「マネージャ」が気に入られるケースである。つまりお客様の満足はかなり人依存になる。上流のメンバや、マネージャはある程度の給料をもらえるが、プログラマの給料は安く、仕事もエキサイティングとは言いがたいことが多い。
経営者としてのメリットとしては、大変ではあるが、他の形態と比べると安定してお金が儲かるところだ。お客様からすると、「安心」を得るために、二次受け、三次受けの構造になり、中間マージンを取るので、値段は高い傾向にある。企業側も利益を出すのが命題であるので、お客様が喜ぶことよりも、利益を追求することが珍しくない。(もちろん全ての会社がそういうわけではない)経営者とプログラマは、経営者がやりたい事とお金を儲けるために、お金を払う代わりに、プログラマに労働提供してもらう形態だ。だから、プログラマは出している価値に相当するお金がもらえないのは当然だ。その代わり、プログラマはキャリアを積む事ができるし、安定してお金をもらえる。
さて、上の2つの最後にご紹介する形態の会社が圧倒的に違う事がある。上記の2つの会社とは違う事がある。それは、会社が利益を一番に考えていない事だ。A. C. の形態でもビジョンなどでそういう風に言っている会社も多いし、実際にそう思っていると思う。
第三の形態
しかし、どうしても経営者の方では「お金払っているんだし、リスクもかぶってるし、お金たくさんもらって当然だよね。雇ったプログラマは同じお金を払うなら、たっぷり働いてほしいよね」という傾向になるということである。しかも、VCや株主から儲けの圧力が当然のようにかかる。自分がしたいことのためにはお金もかかる。
だからどうしても「利益をたくさん出す」というところに経営者は一生懸命になるのだ。だから、プログラマはお金が安く、たくさん働く事になる。これは経営者としてはある意味当たり前だし、プログラマと合意済みなら何も悪くないと思う。しかし、次に出てくる形態は、利益が一番ではなく、恐らく「お客様/エンジニア/経営者」の幸せを一番に考えている形態と言える。本当に一番がお金儲けじゃないのだ。
B. お客様/エンジニア/経営者の3者の幸せを実現する小さな会社
この形態の会社は、会社の拡大や、利益をひたすら伸ばす事よりも、お客様/エンジニア/経営者の3者がWin-Winになって、幸せになるような形態を目指したものだと思う。お金=幸せじゃない価値観とも言える。実際私も自分で会社をやっていて、ハードワークをしてお金を稼いだ時期があるが、ある時期から、お金を儲ける事よりも、自分やお客様が幸せになるような幸せシフトをしている。
この形態の会社は、中間マージンや、マネジメント等の人権費はかからないしVCや株主からの儲けよという圧力もない。ダイレクトにエンジニアと、お客様が話しをして、プロダクトを作って行くため、実際に価値を作るプログラマしかないので、よけいなコストがかからない。プログラマも自ら仕様を考えるのでとても面白いし、頑張ったら頑張っただけお金ももらえる。無理しているのではなく、無理ない仕組みを考えているのだ。
また、価値を最大化するために、プロジェクト戦略のアドバイスをしたり、一緒に悩んで考えたりする。また、スラックがあるので、プログラマが新しい事を学ぶ時間もある。勤務も自由があるので、家族と一緒に過ごす時間もある。
経営者としても、お客様に喜んでもらえる仕事ができて、周りのメンバーが幸せだし、成長はゆっくりだけど、ビジネスモデルが確立できていれば、自分たちのビジョン通りの会社運営ができる。
余談だが、この前ソニックガーデンさんのパーティに行ってきたが、お客様も会社のメンバーも社長の倉貫さんもいたが、みんなホンマ楽しそうで、幸せそうな顔をしているのだ。こころに何か隠しているのは気づくものだが、みんな本当に幸せそうなことにびっくりした。
ただし、経営者は、他の形態の経営者と比べると、相対的にお金は儲からない。会社が儲かっても、みんなで分配だろう。
これはどういうことかというと、経営者は、会社の中でプログラマなどと、役割分担した1人で、メンバーの1人という考えからだ。この形態は誰かがごっつい儲かるということはないのだが、3者がそれぞれ幸せになる確率の高い形態であると言える。ただし、プログラマは、日々研鑽して高い技術力とお客様とディスカッションする力をキープしないと成り立たない。そういった本当にお客様に価値を出せるプログラマはそれ相応の生活を得てほしいと思うのだ。
最後に
SonicGardenのビジネススタイルに触れたり、ギルドの発表など刺激的な体験して、最近はSonicGardenがつくり出す新しい企業のあり方がとても気になっている。プログラマが優秀になれば、なるほどC.の形態の企業にはとどまりたくないだろう。
大抵のプログラマは、刺激的で、より価値を感じてもらって、お金ももらえるA.の形態を目指すのが普通だろう。実際そういう流れも起こっている。しかし、お金儲け=幸せではない。その2つに相関関係はない。どんなに忙しくても、お金やエキサイティングな仕事をしたい人はA.の会社に行けばいい。でもそうではない人がいたら今は選択肢がない。私のようなお金を死ぬほど儲ける事よりも、いい仕事をすることと、幸せを求める人は今は自分で会社を興すしかないかもしれない。
しかし、SonicGardenやそのギルドの企業はB.の形態の企業だ。そして、この新しい価値観に気づく人も増えてくるかもしれない。いや、私はそういう価値観をもって、長期的にいい仕事を、楽しく、幸せに実施して、お客様から笑顔がもらえるような仕事をしていきたいし、そういった人が日本に増えて、この業界がもっと幸せに感じられる人が増えたら本当に嬉しいと思う。プログラミングは本当に面白く、価値の出る仕事なんだから。ピンハネされている場合ではない(笑)
おまけ
この表を作っている途中に気づいたのだが、形態B.のプログラマの自由度は相当高いが、100%自分の思い通りの仕事ではないと思う。そういう思いがでてきたら、独立する時だ。あと、B.の経営者の△が気になるところだが、Sonic Gardenギルドだと、プログラマ=経営者なので、2つトータルすると結構幸せだと思う。
このような素晴らしいビジネススキームを作った倉貫さんは、このみんなが幸せになる形態を維持したまま、B.の経営者のお金のところも○にしてもらいたいものだ。世界を変えている人にはその価値があると思う。(でも、倉貫さんから聞いた話では、彼の給料は副社長が決めているらしいw)
SonicGardenのビジネスモデルや仕事のやり方には非常に興味がある。次の機会には、個人が会社を作って独立するライフとSonicGardenのような新しい形態の会社にJOINする事等の比較について書いてみたい。