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メソッド屋のブログ

米マイクロソフト DevOps エバンジェリスト 牛尾の日記です。ソフトウェア開発の上手なやり方を追求するのがライフワーク。本ブログは、個人の意見であり、所属会社とは関係がありません。

英語鎖国で深刻なのは情報入手のスピードじゃないと思う

エンジニアに英語が必要と言われて久しい。技術情報を早く入手するためには、英語を使えないといけないからとあるがこれは本当なのだろうか?自分的な気づきがあったので、その考察をシェアしたい。

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 エンジニアに英語が必要と言われている。いろんなことが言われているが、情報の入手のスピードが遅くなるという意見がある。個人的にはこの意見はある意味微妙な意見だと思う。 最近だと例えば最新技術に関する海外イベントがあったとしても、翌日、早ければ当日の間に誰かがまとめブログをアップしてくれたりする。もっと時間がかかったとして、2カ月程度後に誰かが書いた日本語の情報でそのことを学んだ ところで、大勢に影響はない。 また、日本語で出ている書籍は確かに翻訳のタイムラグがあるが、海外の人も主だったすべての本を読んでいるわけではないし、日本語になったものを着実に勉強しても、勉強の知識としては、相当なエンジニアになれるはずだ。 では、なぜ?

日本人の英語アレルギー

日本にいると、英語の拒否っぷりにすがすがしい気分すら覚える。私は英語でもブログを書いているが全く読まれないし、それどころか、Facebook に英語でポストするだけで、「いいね」はほとんどつかない。もちろん、英語のMeetupには絶望的に人がいないし、海外の人と会議をしても全くしゃべらない人も多い。

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一方、ネイティブじゃなくても、他国の人は英語がむっちゃくちゃでもとにかくしゃべってコミュニケーションを取ってくる。昔、今のインターナショナルチームに入った時に、最初は同僚がしゃべりまくるスカイプコールがつらくて、Damien に自分は英語がうまくないからといった時がある。そしたら彼はこういった。

Tsuyoshi は英語がうまいよ

私は明らかに同僚より全然聞けていない感じがする。しかし、それは、Damienが気を利かせたわけではないということに気づいた。彼らの中には文法とかぐっちゃくちゃの人もいる。それに比べると私のは相当ましということなのだろう。彼にとってはそう聞こえようだ。  私がどうこうではなく、本来高度な教育を受けている日本人は平均して、英語はわるくないのかもしれない。ところが、圧倒的に英語を「敬遠」する人が多いように感じる。  私は厚かましいたちなので、あまり遠慮はしないたちだが、同僚と働いている中で「英語」を避けることの本当の大きな問題に気が付いてきた。

インターナショナルチームでの苦悩

 インターナショナルチームでは楽しくやらせていただいているが、一つだけ心苦しいことがある。自分のチームに対してバリューが出せていないのだ。私の純粋なチームには「英語ネイティブ」はいない。だけど、彼らは全員英語で仕事をしている。それは、対お客様に対してもだ。もちろんイベントの資料もそうだ。だから、彼らは自分が作った資料やアセットをチームに共有すると、他のチームメンバーがとても喜ぶ。英語でデモをするコードを作ったら超喜ばれる。  ところが、日本だけが、日本語で書かないとお客様や、イベントでは見向きもされない。だから、私がどんだけ一生懸命資料を作ったところで、それは日本限定であり、チームには貢献できない。

 他にもある。私のチームで、PartsUnlimited という、Hello Worldレベルではない DevOps のハンズオンラボをGitHub 上で公開している。今期の戦略に合わせて、その内容を修正/追加しないといけない。

github.com

 ところが、私は日本側の準備(日本語化)をするので手一杯だ。しかも、そのプロジェクトに貢献したところで、日本では英語だから全く役に立たない。だから、メンバーには言わないけど、いつも心の中でメンバーに申し訳ないという気持ちを 持っている。

世界コミュニティは、特にハードルが高くない

日本にいると、「世界挑戦」という言葉があるとおり、「世界」は凄いところで世界に出ていくのはハードルが高いというイメージがある。ところが、他国のメンバーや、他国の友達をみているとそんなことは全くない。私の友達のポーランドの マリアは、16歳のころからモデルをして、他の国を渡り歩いていた。

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ほかのイギリスの語学留学時代の友達も、英語が下手でもなんでもその人が他の国で働くこと自体にハードルを感じている人はいない様子だった。  実際にインターナショナル環境で働いてみると、彼らが圧倒的に優秀とかではない。世界にも優秀な人そうでない人もいる。MLBは、本当に世界の超一流が集まっているのでハードルは高いが、普通の仕事はそうではない。日本はそうでも ないが、海外に行くと、他の国の人々を頻繁に見かける。

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 しかし、問題は、ソフトウェア開発だと平均すると、日本のレベルははっきり言って相当低いと言わざるを得ない。世界が凄いのではなく、日本がしょぼいのだ。これはなぜだろう?

世界コミュニティに貢献できないことがもたらす問題

 英語を避けることによって、最も問題なのは、世界コミュニティに参加できなくなることだ。私が「インターナショナルチームでの苦悩」で書いたことは、日本の縮図である気がする。

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 例えば何かの仕事を一緒にするときに、日本以外の国は、英語でも突撃して、世界コミュニティがやっていることに対して「貢献」をする。それはブログかもしれないし、コードかもしれない。講演をして、アイデアをシェアするのもその一つだ。  実際にアジャイルカンファレンスに出かけると、スピーカーが「ネイティブ」とは限らない。普通に講演しているし、ブログや書籍も英語でガンガンに書くし、例え英語がしょぼくても、英語でガンガンにコミュニケーションを取って、その場でバリューを出して貢献しようという姿が感じられる。

 ところが、日本だと、「英語での最新情報を早く入手したい」という意識はあれど、「貢献しよう」という人は相当少ない。もし、それを、「世界コミュニティ」のメンバーから見たらどう感じるだろう。何の貢献もしないけど、情報だけを欲しがる 「クレクレ君」に見えるのではないだろうか?私は少なくとも、みんなにいろんなことをしてもらっているのに、もらう一方だと相当肩身が狭いので、貢献をしたいという気持ちになる。誰が「クレクレ君」と一緒に仕事をしたいと思うだろうか?

 その為には、英語のレベルがどうや、こうや、と言っている暇があったら、世界コミュニティに「貢献」を始めたほうがいい。気軽に始めるのは、ソフトウェアだと、Issueを送るとかPull Requestを送るでもいい、ブログでもいい。なんでもいいけど あれだけ情報をもらっているのだから、こちらもシェアしないのは相当イケていないと思う。

 我々はどれだけ日本語で情報発信したところで、日本国内の人にしか役に立たない。素晴らしいアイデアをもらっている世界コミュニティーには何の貢献もできていないのだ。情報だけをゲットしておいて、自分の成果は、自分だけで享受なんてなんとも虫がいい話じゃないか?

翻訳業にパワーを割くのをやめよう

 また、他にも問題がある。世界コミュニティに「貢献」することは、単に親切だからとかではなく、自分が欲しいものを作った時に、他にも同じ問題で困る人がいるようだったら、それを単にシェアすると、その人が助かる。特に成果物がコピーできる ソフトウェアはそういうものだ。そして、「貢献」によって作り上げられた成果物は、みんなでシェアすることができる。  例えば、ハンズオンラボをみんなで作ったら、URLをシェアして、お客さんに渡してあげると喜んでもらえてバリューが出る。しかし、日本だとその成果が翻訳されるのを待つしかなく、それをお客さんに渡しても、英語のままだと全く喜ばれない。しかも、文化的背景もあり、向こうでうれしいものがこちらでもうれしいかはわからない。

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だから、多くの日本人の人は「翻訳業」に多くの工数を使っている。しかし、ソフトウェアはバージョンアップするものなので、その保守はどうしたらいいのだろうか? そんなことをしている間に世界コミュニティのメンバーは、協力・貢献して、どんどん成果をシェアしていってその恩恵をうけて生産性が向上していくことになる。翻訳を鍛えるよりハックを鍛えよう!

フィードバックを受けられない問題

それだけではない。世界コミュニティに参加できないことの問題として、フィードバックを受けられない問題がある。それは、最初の英語力のレベルとかそういう問題ではない。

 例えば、ブログを書いたら反応があるし、コードで貢献したら、コードがイケてないと受け入れてもらえない。そういう過程を経て世界の人がどういうレベルなのかを肌で感じることができる。また自分に足りないことはどこだということも、試行錯誤を繰り返す中でだんだん明らかになってくるだろう。世界の中で働くことで自分が世界で働くには何が足りないかが明確に見えてくる。

blogs.technet.microsoft.com

しかし、日本のサイロに閉じこもって、日本国内だけで思考していると、そういうフィードバックを受けることはできない。以前のポストでも書いたが、海外の人はAgileでもDevOps でもコンセプトを誤解していることが非常に少ない。それは、ロジカルに、抽象的に考えることが得意な傾向があるからではないか?と以前のポストで書いたが、そのほかにも「フィードバック問題」があるかもしれない。

simplearchitect.hatenablog.com

 我々は、数年後だが、翻訳本を入手できるし、ブログで最新技術を紹介してくれる日本語ブログを書いてくれる人もいる。だから「情報」だけでは、「5年とか、8年」と言われる日本の遅れは説明できない。問題はそこではなく、実際にプロジェクトで実施する レベルに到達する程度に本に書いてあることを理解するためには、やってみて、失敗して、フィードバックを受けたり、経験者とディスカッションする必要がある。日本だと、せいぜい狭い日本人コミュニティの中でしかこれができない。日本人の中だけだと、 すべを日本人の常識や、日本人の現在の状況だけで物事を判断しがちになってしまい、結果として、魔改造が「正」として横行するケースもあるように思う。

channel9.msdn.com

 今は海外に行くハードルは高くないので、海外カンファレンスに行けば、本を書いている著者と直接話すことができる。そうじゃなくても、海外のカンファレンスに来ている人々と、ディスカッションをしてみることで、他の国の人がどの程度のアジャイルを実践しているかがわかる。そういう、インタラクションを通じて、「肌感覚」みたいなものはわかるのだと思う。

 これが、日本だと、「海外だからうちは関係ない」となりがちだが、日本は大したプレイヤーがいないから、と日本市場になだれ込んで来たらどうするのだろうか?今は「鎖国」だから、そうはなっていないが、少しづつ、文明開化を足音が聞こえてきている気がする。 私のおすすめは、日本にいても、世界コミュニティの一員という視点で考えてみるのがいいのではないだろうか?

どうやって、世界コミュニティに進出するか?

 世界コミュニティに進出する方法は、基本単に進出すればよい。特にそこに準備は必要ない。英語があったほうがいいとは思うが、「〇〇ができるようになってから」というタイミングは永遠に来ない。じゃあ、どうやって、日本にいたままそれを達成するか? 現在の私のおすすめは、「英語のMeet up」に参加するというものだ。もちろんすべて英語だ。

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www.meetup.com

 英語がわからない不安が当然あると思うが、ここでは、「英語がわかる」を目的としていない。英語勉強にはモチベーションが重要だ。全く英語を使う必要がない人と、月に1回でもいいので、英語をしゃべれないと何もできない環境にやってきて、「次こそやってやる」 と思うのと、どちらが英語が上達しそうだろうか? 今の時代「英語を学ぶ方法」はいくらでも転がっている。それよりも、パッションが最も重要だ。遊び系がよければ、完全英語のコメディショーも面白くておすすめだ。

itpro.nikkeibp.co.jp

東京で行けるガチ英語コメディショー: Improvazilla Main Stage Show

日本ではなく、世界コミュニティに貢献する

私は日本人のためだけに仕事をするのをやめよう。日本人に対して仕事をするのをやめるという意味ではなく、世界コミュニティの一員として貢献していこうと考えている。たくさん失敗もすると思うが、そうしていくと、「世界平均」ぐらいの実力は身につくかもしれない。  私は、本当に重要なノウハウというのは、人の中にあると思う。本やビデオで習得するのは限界がある。だから、マイクロソフトでも、講演やデモを中心としたスタイルから、ハックフェストといって、お客様の社内でハッカソンをしてお客さんと一緒に最も難しい問題を解くことを支援するという動きに変わってきている。

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 これは、おそらく、講演やビデオは、いくらでもオンラインで見れる。だから、本当の価値は、それぞれの人の中に潜むノウハウなので、ディープな知識を移転し、かつ、実際にコードを共同で書いて問題を解決するのが、最も成果(リードタイム短縮など)を出しやすい。だから そういうスタイルを本社も押しているのだろう。そのためにも、自分がまず世界コミュニティの一員になれるように頑張ってみて、そこで世界平均ぐらいのレベルを獲得してみたい。

 だから、「世界コミュニティに参加しよう!」思っている人を今後は積極的にご支援していきたいと思っている。それが、私のビジョンである「日本をUSと同じスピードで技術やプロセスを導入することができる国にする」ことには必要な気がしている。