メソッド屋のブログ

米マイクロソフト Software Development Engineer 牛尾の日記です。ソフトウェア開発の上手なやり方を追求するのがライフワーク。本ブログは、個人の意見であり、所属会社とは関係がありません。

マイクロソフトの de:code の DevOps トラックが奇跡の展開になっている件

私のメインマシンは未だに Mac で現在も docker を中心としたオープンソース系の DevOps 技術が大好きだ。そんな私でも正直、今年の de:code というマイクロソフトのイベントはありえない展開になっていると思う。本当にこうなったのは私の力ではなく、日米のマイクロソフトの仲間と、一緒に仕事をさせてもらっているクリエーションラインさんのおかげで、少なくとも DevOps トラックは奇跡の展開になっていると言っていい。これがマイクロソフトだからという理由で世の中にあまり知られていないのはもったいなすぎる。

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OSSを愛する一人として言っておきたい。

はっきり言って、DevOps やマイクロサービスに興味があるならマイクロソフトに全く興味がない人でも参加する価値がある。

その理由を簡単にお話ししたいと思う。この先を読んでいただいたらその理由がわかってもらえると思う。

理由その1. 超豪華 OSS 系ゲストスピーカーの数々!

Mesosphere社 Mesosphere DCOS 開発者 Aaron Williams氏

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今年のゲストスピーカーは超豪華だ。そしてそれは、MSのスピーカーに限らない。まず最初に、Mesosphere社の、Developer Aaron Williams氏がやってくる。彼はMesosphere DCOS という基盤を作っている。これはマイクロサービスや DevOps の世界に革命をもたらすかもしれない技術だ。それは「データセンターOS」といって、データセンターをまるで 1台のPCのように扱うことができるようになる技術だ。 例えば "dcos install spark" なんてタイプすると、データセンターのクラスタに Spark が展開されるという恐ろしいものだ。この技術は、Twitter, AirBnB, Apple でも使われている実績ある技術 Apache Mesos がベースになっている。この技術者が来日してトークしてくれる。 私もこの話を Vietnam でしてきて、2nd speaker prize を受賞させてもらった。それぐらい衝撃的なテクノロジーだ。しかも、多くの人は知らないかもしれないが、Microsoft の Azure Container Service というサービスの基盤でもある。そしてマイクロソフトWindows 版を出すとも言っている。何が起こるんだ?

mesosphere.com

そんな人が来日なんて、もう既に頭が沸騰しそうや!

Chef社 VP James Casey氏 

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そしてそれだけに終わらない。Infrastructure as Code の世界で、デファクトスタンダードと呼べる Chef からはまさかの VPが来日。James Casey氏が来日する。大抵の Infrastructure as Code の話は Linux ベースの話が多いが、Chef のいいところは、技術が何年も使われてコードが書きやすい事、アジャイル好きな私として胸熱ポイントは、テスト駆動インフラストラクチャの仕組みが充実していることも特筆だ。また、Linux, Windows の両方のサポートが優れている事も素晴らしい。なんと今回はガチのテスト駆動インフラストラクチャのデモが眼前で繰り広げられるらしい!

大抵の企業は、WindowsLinux も両方存在するだろう。そうなるともちろん片方だけではなく、両方を同じ技術で統一したいところも多いだろう。また、10台ぐらいのサーバーだとなんでもいいが、それ以上になるとサーバーの構成管理も大変になる。そういう時に chef はサーバーが充実しているので、とても快適になる。個人的にも DevOps系 の技術で最初に衝撃を受けたものなので、そんな皆さんとお仕事ができるなんて、とても感慨深い

Chef - Code Can | Chef

CloudBees社 Jenkins 開発者 川口耕介氏

channel9.msdn.com

そして、Jenkins の作者の川口耕介さんが普段住んでおられる米国からわざわざ de:code のために来てくれた。Jenkins といえば、CI/CDのデファクトスタンダードだ。OSS系、MS系関係なく使われまくっている。高機能なのに、実行は本当にシンプル!そんな素晴らしいツールの作者が日本人の方だなんて素敵すぎます。そんな川口さんがやってきて、docker を使った継続的デリバリのお話しや、Azure との連携、そしてJenkins 2.0 のお話しもぶちかましてくれる。私も以前スペインでインタビューさせてもらったのだが、その時も相当面白かった。今度はこれをみんなの前でお話ししてくれるのだ。これは Java エバンジェリストのてらだよしおさんのおかげなのだ。

https://www.cloudbees.com/

しかし、それだけに留まらない。さらに DevOps テロは続く。

HashiCorp社 Mitchell Hashimoto氏

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自分的に超絶アツいのが、HashiCorp の Mitchell Hashimoto 氏だ。あの Vagrant, Packer, Terraform, Consul 等の作者で、HashiCorp のファウンダー。これらのツールはほんまにシンプルで、無駄がなく、かつ気が利いている。この”手になじむ”感は使ったものでしかわからない。これは Unix の思想に影響を受けた、HashiCorp Tao のマインドセットから生まれたものだろうか?昨日もHashiCorpのSerfを使ったクラスタをAzure 上に構築したが、インストールがあり得ないぐらい簡単(バイナリ一つにパス通すだけ)で数コマンドでクラスタが構成できた。 DevOps ファンの方なら、Otto のリリースの当日、タイムラインが otto で埋まったことを覚えているかもしれない。最近出たNomadがむっちゃ簡単に構成できるのに、あっさりマイクロサービスの基盤ができちゃうとか素敵すぎる! そんなHashiCorpのMitchellがガチ来日。もうありえない。HashCorp の最近のツールは Go で作られているため、意外に聞こえるかもしれないが Windows との相性もいい感じ。今後さらに注目が集まることが予想される!

https://www.hashicorp.com/

そして、恐ろしいことに、これらのメンバーが集結してスペシャルセッションと称して、パネルディスカッションを決めるのだ。こんなDevOps 界の東西の横綱が一同に会して同じ壇上に上がるなんてはっきり言って西海岸でもありえない展開だ。それぞれのメンツがそれぞれキーノートになれるぐらいの実力がある。

おお、なんとすごいイベントだ、まるで DevOps やマイクロサービスのオールスターのようだ、、、と思っているかもしれない。 私もそう思っていた。しかし、さらに凄いことが起こったのだ。

理由その2.マイクロソフト最高の DevOps チーム Sam Guckenheimerが講演

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マイクロソフト一番の、DevOps 実践チームを率いる Sam Guckenheimer も来日する!そしてガチ事例を話してくれる。マイクロソフトが 内部でどんな開発をして、どうアジャイルや DevOps に取り組んできたか?ということを本人の口から話してもらえる!これは激アツとしか 言いようがない!日本ではあまり有名じゃないかもしれないかもしれないけど、彼は複数の素晴らしいソフトウェア開発に関する書籍を 執筆し、世界最大のアジャイルカンファレンス 2014 のキーノートスピーカーなのだ。私は友人の楽天の川口さんから彼の存在と素晴らしさを教えてもらった。今はマイクロソフトの中の人だからわかるが、マイクロソフトの DevOps の事例の最高のものは彼のチームのものだし、各種のホワイトペーパー、アセスメントの元になっている 7 habits という DevOps の成功のための7つの習慣を考案したのも彼だ。

まさに、12万人以上いる全世界のマイクロソフトにおいて DevOps の頂点に間違いなく君臨する男が来日するのだ。

stories.visualstudio.com

こんなすごいイベントが黒船でなくていったい何なのだろうか?間違いなくこの日から日本の DevOps は変わる。本当にそう思う。

理由その3.国内 DevOps 超強力ゲスト+MS技術の達人によるチョークトークと事例

これだけでも爆発的だが、国内ゲストスピーカーもあり得ない展開だ。元AWSアジャイル DevOps Cloudコーチの吉羽龍太郎氏、日本で唯一の公認docker トレーナーの資格を持つ男で私も尊敬する前佛雅人氏、マイクロソフト ITPro 界の超人気スピーカーでマイクロソフト技術を知り尽くした男、高添修さん、そして僭越ながらモデレータとして私が入って、DevOps について語りつくすチョークトークなんかも存在する。実際の DevOps 事例として、楽天のKanioさんと川口さんによるガチDevOps 事例 on Azureも非常に楽しみだ。

このように、国内外の DevOps の最新事情がガチで体験できる恐ろしいイベントになっているのだ。もう来年はこのレベルを維持できるかはわからない。でもこれがきっかけになって日本でも DevOps の導入が進むのではないだろうか?

まとめ

中の人になったのでなんだが、今のマイクロソフトは本当にむっちゃくちゃ変わっている。こんなイベントにちょっとでも貢献することができて本当に幸せだ。もし、来れるなら是非来て、その目で、世界最先端を体感してほしい。

今回はゲストスピーカーのお話しばかりしてみたが、OSS の世界の人間である私が、MS に入って知った注目技術を次回は紹介したい と思います。あのマイクロサービス本の監訳者の人が自信をもって紹介するあの基盤とか! お楽しみに!

de:code (decode) 2016 | 日本マイクロソフトの開発者/アーキテクト/IT Pro 向けイベント - Microsoft Events & Seminars