メソッド屋のブログ

米マイクロソフト Software Development Engineer 牛尾の日記です。ソフトウェア開発の上手なやり方を追求するのがライフワーク。本ブログは、個人の意見であり、所属会社とは関係がありません。

Agile Tour 2010 Osakaで講演してきました

最近、このブログも休眠中でしたが、アジャイルの講演を実施しましたので、講演資料の公開のために久々にブログにあげておきます。


今回のタイトルは


「西日本にだけこっそり教える アジャイルコンサルタントの秘密」


というものなので、西日本の人のみアクセスしてください。ある人が私の講演しているUstreamに東日本からアクセスしようとしたら、なぜか途中で止まったそうです。(笑)



 今回の講演ですが、資料を作る前に最初に申し込んでいる人の申し込みコメントを頂いたのですが、はじめて参加される方、アジャイルについて知りたい方が多かったので、基本的な内容を中心にしようと決めました。


ただ、わざわざ勉強会に来られる方は勉強熱心な方が多いと思うので、そういう人にも何か一つでも持って帰っていただけるように、アジャイルの組織導入のお話と、具体的なツールのご紹介をしようと決めていました。


 最近はアジャイルの組織導入のコンサルティングを実施していて、2010年の今、気づいたことの一つに、アジャイルの基本」とは一体何か?ということを、今はじめて、会社の組織がアジャイルを導入するから勉強しようと思った人が勉強しにくい環境にあるということがあります。ボランティアで勉強会に熱心に参加する人なら別でしょうが、普通に務めている人にとっては難しいと思います。



 アジャイルの資料や、記事は巷に溢れていますので、「情報」には事欠きませんが、アジャイルを学ぶとき、一番最初に知ってもらいたいことは一体何かを考えました。


現在アジャイルと呼ばれる開発手法、メジャーなところでは、XP, Scrumといった方法論は199x年ぐらいから存在しますが当時はアジャイルという呼ばれ方をされていませんでした。


たしか2001年ぐらいだったかなぁ、アジャイル宣言という宣言が採択されました。それは、それらの開発手法の提唱者が集まって、「今のソフトウェア開発はこういう要素が必要だよね」ということで合意できた内容になっています。ですので、その宣言にそった開発手法なら何でも「アジャイル開発」と呼べることになります。


 そんな状態ですので、世の中の記事を見ても「アジャイル」というくくりで語られることは、「アジャイルのプロセス」「アジャイルの考え方」「お菓子の用意の仕方」「人を非難しない方法」「見える化」など多すぎて、今回私が「アジャイルの基本」というものを簡潔にまとめようとしたときに頭がオーバーヒートしそうになってしまいました。


 2000年頃からやっている私でもそうだったら、はじめての人に簡単なハズがありません。


 ですので、私はご批判もあるでしょうが、まず「プロセスをうまく運営する」ということだけに絞って「アジャイルの基本」の考えをアジャイルプロセス ベースライン」という7つのポイントにまとめてみました。できるだけ、簡潔に、でも重要なことは話されているように。


 アジャイルの流行とともに失敗事例も増加していると聞いています。私はアジャイルプロセスは、プロジェクトの成功のために導入して、アジャイルを導入してから、自分のやってるプロジェクトで、アジャイルを失敗させたことはありません。

(プロジェクトは難しい行為なので、今後も絶対失敗しないかというとそう甘くはないと思いますが、少なくとも昔より成功率は格段にアップしていることは間違い無いです)


 そういった経験と、アジャイル開発の知識から、特に重要と思うポイントを明確にして、日本のアジャイル開発が少しでも成功しやすく成るように。そんな思いで、ない頭を振り絞って考えたつもりです。


 アジャイルの達人の方々には「あれが入っていない」「コレも重要」というご意見も当然あるとおもいますが、まずは、そういった活動の第一歩としてこの資料を公開したいと思います。


 また、後半のアジャイルの通知表、Agile Value Chart」は現場の実践で効果があった方法です。


アジャイル導入の効果を如何に「見える化」し、上位マネジメント層にシンプルに、アジャイル導入の成果を目的レベルで整理して進捗を報告するために考えたツールです。

 アジャイル開発は現在「開発者」や「チーム」中心に考えられすぎているように感じます。もちろんそれはとっても重要で大切なことです。しかし、アジャイル開発に携わるステークホルダは開発者やチーム、顧客だけではありません。上位マネージマネジメントや標準化グループ、マーケティング部門等多くの部門の人々が関わっていますし、アジャイル導入するのも「目的」があるはずです。会社の重要な戦略の一部として位置づけている企業もあるでしょう。


 アジャイルでは、「顧客」や「PO」と呼ばれる人が持っている役割は私にはとても多く感じます。一人でカバー出来ないぐらい大きいと思います。例えば全体プロマネ的な要素であるとか、プロジェクトの企画やBA(Business Analysis)の要素をアジャイルに回すことが必要です。これはとても大変なことです。
 アジャイルを導入するドメインやコンテキストによって、それらの「重さ」や「作業量」は全く異なりますが、そういったものを整理していくのも、アジャイルコミュニティの新しい役割だと思います。


 そんな思いを込めたドキュメントです。はじめての皆さんがチェックリストに使えるように、あえてプレゼンテーションZenじゃないスタイルで作ってみました。少しで皆さんの役に立ちますように。





ちなみに、Agile Tour Osaka 2010は、大阪ならではの活気に溢れていました。大阪の皆さんは、「ああ、XX
だからうちではできない、、、」と簡単にあきらめず「なんとかしたるわボケー」というパワーに溢れていて
大阪者の講演は、現実的で、実践的で、個性的という特徴を持っているように思います。



 当日の講演の内容はTwitterでつぶやいておきましたが、本当に行ってよかったです。



 長瀬さんの講演も、私も大手SIerでPMやアーキテクトをやりながらアジャイルをやっていたので、わかるわかる、むっちゃわかるわ〜という内容で、しかも深く突っ込まれている極めて現実的なお話でさすがエバンジェリスト!と思いました。



 また、今年「チケット駆動開発」の書籍と、ブログや講演でのご活躍でブレイク中のあきぴーさんの講演も流石の一言。現場でじっくり学び、考え、実践した人の血と汗と涙の結晶のような珠玉のノウハウを、惜しげもなく公開してくれました。



 懸田さんは、あまり日本では公開されていないUser Story Mappingの話をされていました。私は知らなかった
ので、とても勉強になりました。プロダクトバックログは、理論上は「リリース計画」になっていますが、実際にやると、複雑になるので、「一覧性」「パッと見で理解」ということには劣ります。つーるなので、すべてをカバーしていないので当たり前なのですが、そういうときにUser Story Mappingの立体的で、直感的でシンプルな方法は、魅力的に感じます。昔から着眼点が鋭く、早い懸田さんは流石。

 帰りにも久々にお話をさせてもらって、お褒めもいただいて本当に嬉しかったなぁ。



大阪はホンマ最高。ええとこだっせ。グランシャトーも、サンテレビもある。

世界規模のアジャイルツアーがあえて東京ではなく、大阪のみで開催されたのがまた痛快だったなぁ。