メソッド屋のブログ

米マイクロソフト Software Development Engineer 牛尾の日記です。ソフトウェア開発の上手なやり方を追求するのがライフワーク。本ブログは、個人の意見であり、所属会社とは関係がありません。

アジャイルコミュニティのエネルギーを作り出した人々 〜 AgileJapan2011にて 〜


アジャイルジャパン2011のコミュニティのエネルギー


AgileJapan2015に参加して講演して、ハードダンスをしてきました。


講演の内容はリンダ・ライジングさんの素晴らしい講演や、USP(ユニバーサルシェルプログラミング)での驚異的な事例、SalesForceでの実践的なアジャイル事例など強力な内容でした。これらは多くの方がブログされているので、私が駄文で補足するまでもないでしょう。


フリーペーパーEMZeroでの素晴らしい公式レビューがありますのでリンクを張っておきます。


http://www.manaslink.com/article/


私が講演の中身について書かないのには理由があります。


今回のアジャイルジャパンで、私が最も感慨深かったことは、このアジャイルコミュニティのエネルギーの強大さです。昔アジャイルを始めた頃はみんなマイナーでテロリストや宗教家扱いでした。それがIBMの大きな会場で熱心な人々が200人以上も人が集まっているのです。それどころか、日本各地にサテライトまでもうけられています。


こんなに凄いコミュニティが生まれた背景にはもちろん、参加している皆さんのエネルギーが集まったからですが、エネルギーを放ってコミュニティを牽引した人々がいました。そういう頃のお話も書いてみたいなと思いました。


アジャイルコミュニティを引っ張った人々


学びの時代、そしてテロの時代(〜2003)


 日本でのアジャイルコミュニティのスタートはxp-jpというメーリングリストで始まりました。それは今もひときわ輝いてコミュニティに多大な貢献を続けている平鍋さんの情熱が発端でした。オブジェクト指向、パターンの文脈そして、誇りをもって真のプロフェッショナルプログラマと呼べる人々がアジャイルの黎明期を支えていました。当時、アジャイルという言葉はなく、XP(eXtreme Programming)というアジャイル手法がそのムーブメントの中心でした。テクノロジックアートの長瀬さんは、会社でコミュニティ及び書籍を多く翻訳したり、海外から大物を呼んできました。そして、平鍋さんが所属している永和システムマネジメントはこの10年以上にわたる日本のアジャイルアジャイルコミュニティを支え続けた本当に素晴らしい企業そして人々だと思います。今回のサテライトに永和システムマネジメントのメンバが分散して素晴らしい貢献を続けています。
 当時豆蔵のSmalltalkによる事例は衝撃を受けました。そして日本ユニシスの事例、当時はメーリングリストでも「XP」がどんなものかよくわからず、皆で議論したり、本が出るとむさぼるように読んで実践しては試行錯誤の繰り返しといった時代でした。懸田さん、小井戸さん、あまにょんさん、水越さん、当時学生だったけど当時から凄かった渋川さん、大阪は中心になってくれたNCSの新保さん、高森さん、山根さん、、、いっぱい凄い人がいました。当時は技術やプロセスの話しが多かったと思います。


世の中では全く受け入れられなかったけど、なんだかわからないけど、この方法がシステム開発を根本から変える事ができる!って思っていました。


実践の時代(2004〜2008)


 平鍋さんが相変わらず情熱を注いで、ウォータフォール文化、大手SIer文化の日本でなんとかアジャイル開発の一部だけでも活用できないか?という発想でし、素晴らしいプロジェクトファシリテーションという考え方を生み出し、そこに新たなムーブメントが生まれました。事例もだんだん増えてきて大手SIerでも一部の人がテロ的な取り組みが広がってきました。ここでも永和システムマネジメントに中心メンバーが集まって強力にコミュニティを支えて行きました。黎明期のメンバーから、さらに強力な情熱を持った角谷さん、リーダー、岡島さん、そして英語も強力に堪能で冷静な頭脳とクリエイティビティを持ったやっとむ。第一期アジャイルブームが下火になっても相変わらず日本のコミュニティを牽引してきたのが永和システムマネジメントの人々でした。さらに、この時期で私にとって衝撃的だったのは、チェンジビジョンと、Sonic Gardenの立ち上げでした。どちらも、アジャイル開発を最前線のビジネス現場で実践/活用して、確実に価値を出していたからです。チェンジビジョンは製品の頻繁なリリースと製品改善そして、重厚で効果だったUMLツールを「手書き」感覚に変えたイノベーションを実現しました。そしてSonic GardenはRuby x Cloud x Agileの中で、サービスを生み出す企業を倉貫さんが経営し、アジャイルの良さを活かし、最先端で独自のスピード感溢れる開発の方法を考え、実践していました。学びの時代と違い、実践し、それを自ら考え、新しいやり方を開発、実践してきた人が時代を牽引しました。これは本当に凄いことだと思います。しかし、このころも一般に広まっているとは言いがたい状態でした。


ブレークの時代(2009〜2011)


 そして、Scrumのコミュニティをミルズさん、林さん、エバッキーさんそして、川口さんといった情熱溢れるメンバーが牽引してすくすくスクラムのコミュニティが誕生し、その努力もあり、世界でScrumを中心とした第二期アジャイルムーブメントが起こりました。永和システムマネジメントメンバの貢献は相変わらず強力ですが、それに加えて、Odd-eのミルズさん、エバッキーさん、セントラルソフトの林さんが世間を牽引し、さらに、近年は川口さんの情熱とコミュニティへの貢献がアジャイル界を動かしているイメージすらあります。彼の情熱からいろんな外タレが日本にやってきました。日本のアジャイルの情報は海外に比べて3年遅れと言われますが、その時間差が少しずつ短くなりました。
 そして門戸が広がって、多くの人がアジャイルを実践できるようになりました。さらに、アジャイルは従来足りなかったBA領域(要求開発、CSPO, UXの技法等)、マネジメント領域もカバーされつつあります。そして何より実践のビジネス価値を上げている事例がもっともっと増えてきました。まさか、PMIがアジャイルの認定試験をやる日が来るなんて、、、。


 その上、原田さんやミルズさん、エバッキーさん、平鍋さん、やっとむさん、てつ。、といった強力に英語も操る人の大変なご努力で沢山の情報がだんだん速く得られるようになってきました。

 
 もちろんここには書ききれなかった多くの人々が日本のアジャイルに貢献しました。トップダウンではない本当のボトムアップムーブメント。企業じゃない、人々の情熱が、コミュニティがこの状態を作りました。第二次世界大戦で焼け野原だったのに、今は構想ビルが沢山立ってきて、とても活気に溢れている昭和の時代にいるようです。


そしてこれから


みんなの努力と、実践で、多くのノウハウが日本の現場にもたまってきていると思います。個人個人はもしかすると、たいした事をやってないと思っているかもしれませんが、それぞれの現場にそれぞれの宝があり、それは他の人からみたら黄金の輝きを放っているかもしれません。これからは、現場でアジャイルを実践して、そこで得た事をもっと世界の人々と共有して、日本や世界に発信して、アジャイルという思想の源流の地である日本が世界からもらったものをお返ししていく時期だと思います。そして、それはきっとできるんだと思います。そしたらもっと、いろんな人々が幸せになれる時代がくるのかもしれませんね。


 他には、エンジニアリング企業だけでなく、「ユーザ企業」さんに対してわかる言葉でアジャイルの価値をわかりやすくお伝えして、もっと日本のユーザ企業が競争力を得て、本当にITで得をしてもらえる世の中になったらいいなと思っています。


この部分はまだまだ日本ではまだまだこれから。やりがいのあるところですね!私も微力ながらがんばります!


そんなわけで、一応私の講演パワーポイントも公開しておきます。アジャイルの組織導入のノウハウを私なりにまとめたものです。少しでもアジャイル導入で困っている人に役立てば嬉しいな。とおもって一生懸命つくってみました。